孤独死予備軍55歳独身オヤジの非正規夜間警備員、病院巡回日誌7

目次

最近、新型コロナウィルスのパンデミックで、世界中が大騒ぎしていますよね。

特に感染の酷い地域では窮屈な生活、

不安な生活を、

おくっていらっしゃる方が多いように思えます。

テレビのワイドショーなんか観ていると、

私の住む九州南部の地方都市とは雲泥の差があります。

こっちは、結構、他の国の出来事みたいな感覚で、

東京などの映像を見ています。

のんびりしていますよ、こっちは。

しかし、そうは言っても、私の勤務場所はそれなりの規模の総合病院。

それも高齢者の入院割合が非常に高い。

万一、従業員に感染者が発生したら、

一定期間は外来受付をストップせざるを得なくなると思います。

高齢者が多いということは、

死亡者も出る可能性が高いということですよね。

今回のウィルスに感染したら。

私たち警備員も病院スタッフの内になるんです。

最近は、病院の管理部長の指示で、

勤務前に体温を図るようになっています。

風邪のような症状になった場合は勤務停止になるようです。

でも、そうした場合、代替えの警備員っているのかな?

と思っているんです。

その場合は、恐らく誰かが連続出勤とか、

休日出勤となるんだろうな、と思います。

私はそれが一番嫌なんですよね~。

いまの病院警備は、4名体制でシフトを組んでいます。

2人がペアで出勤。

ま、ペアの組合せは日によって変わりますけど。

残り2人は休みとなります。

出勤組が、1人急遽勤務出来ないとなれば、

本来休みだった残りの2人の内、

どっちかが急な休日出勤となるんですよね…。

(夕方からの勤務…酒飲みに行っていたらどうするんだろう?)

憂鬱になります、そんな場面を思うだけで。

4人のうち、私が55歳。

残り3人は70歳越え。

・・・。

今回の本題は、前回記した予告とは違います。

予告内容を書こうと思ったんですが…。

つい最近、面白いというか、ビックリしたというか、

こんなことでいいのかな?

という事が起きたので、それを書きます。

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2.今日の本題『ここには、誰かがいる…』

新型コロナウィルス感染が問題になってからというもの、

私たち夕方から出勤の夜間警備員はめっきり暇になりました。

面会禁止になっていることが原因ですね。

ま、それ以前に面会時必須のマスクが手に入らなくて、

怒って帰る人が続いた事も、

一つの要因に上げられるかもしれません。

救急車で運ばれてくる人も、交通事故などの外科的処置を要する方のみ。

風邪、インフル、肺炎などの症状の人は運ばれてこないようです。

恐らく、そういう患者さんは、

国立病院や医師会病院へと搬送されているのだと推察します。

よって、私たちは夕方~早朝までを、ホント暇に過ごしているんです。

電話も滅多にかかってきません。

毎日受付に来られていた製薬会社の営業マンも、

全然見なくなりました。

夜間の病院内に居るのは、

医師、看護士を含めた病院スタッフと入院患者のみ、ということになります。

以前お話しましたが、

私たち夜間警備員のメイン業務は、

外からの不審者を侵入させないということと、

逆に入院患者の脱走をさせないこと、

の2点なのです。

そのために、病院内の巡回業務や、

各所に取りつけられた監視カメラと、警備室内のモニター画面による

監視をしているのです。

これまで、時々は発生していたようですが、

私自身がつい最近体験したことで、ちょっと驚くことがありました。

防犯上の理由から、時間等は適当な時間を入力したり、ぼかしたりします。

病院内の夜間巡回時間って、そんなものなのか、と把握されても困るからです。

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今年2月の、早朝未明という時間帯でした。

魚市場が開いた頃といった時間帯です。

もちろん真っ暗です。

私が仮眠から警備質に戻ると、

もう1人の、これから仮眠に入る警備員が言いました。

「東棟の方の患者さんらしき人が徘徊しているみたいだ」

私はモニターをのぞきこみましたが、姿は見えません。

「今は見えんけど、東棟の方からコンビニの方の出入り口までウロウロしてる」

私はふ~ん、と聞いていました。

良くあることなんで…。

入院したばかりの方って、

いつでも外に出られるのだと思っている方が多いんですよね。

そんなことないだろ、ホテルじゃないんだから…。

「了解です。気をつけて見ておきます」

私の言葉を聞いた先輩警備員は仮眠にいきました。

その時は、もう私の頭からは、

その不審な動きをする患者さまのことが消えてしまいました。

よくあることでしたので。

精神科病棟を含めると300人の入院患者がいます。

一般病棟にでも、痴ほう症の進んでいる老齢患者もかなりいます。

時間帯を問わず、看護士の数が手薄になっていると、

入院患者たちは外に出ようとして、

暗い病院内をさまよいます。

初めてみる方には、

ちょっと不気味さを感じさせる光景だったりしますね。

私は、病院の出入り口ドアの解錠をしに警備室を出ました。

それなりに大きな病院ですので、

出入り口は複数あります。

出入り口の中には、

病院に勤めている人しか知らないような裏口っぽいのも、

いくつかあります。

私は手に持っているマスターキーで、

ドアのカギを開けていきます。

マスターキーは、

いくつかのダミーキーとセットになっている鍵束の中にあります。

万一誰かに鍵束を奪われた場合でも、

すぐにはどの鍵が、使える鍵なのか分からないように、

全く使えない古鍵をダミーとして、

マスターキーと一緒に束ねているんです。

いくつか開けて廻っていて東棟の奥に向かっている時でした。

夜中の診察室前

本通路の脇には、

枝道のように、各種検査室につながるやや細めの通路が時々合流しています。

ま、道路でいう交差点です。

私が本通路を歩いていて、ちょっと何か感じました。

今にして思うと、何かがいる、と感じたのだと思います。

ふと、立ち止まったとき、左側の視野に何か映ったんです。

そして、そちらを見ました。

背の高い人のシルエット!

じっと立ち止まってこっちを見ています。

「なにをされているんですか?まだ●●時ですよ」

そう言って、私は数歩近づきました。

「ここはどこですか?」

「出口はどこなんでしょう?」

???…。

瞬間、私は、彼が何を言っているのか分からず、

フリーズしてしまったと思います。

近づいていたおかげで、彼の姿がわかりました。

身長180センチの細身で、

70歳は越えていそうな知的で優しい顔をしている男性。

服装は、

薄茶のチノパンと灰色っぽいトレーナー、

スニーカー、濃い緑色のベレー帽、

小さめのリュック、といった格好です。

ベッドから出てきたとは到底思えませんでした。

「お名前は?」

と聞いて、氏名と自宅の電話番号を聞き出しました。

警備室に連れて行き、彼を座らせ、当日の入院者名簿を見てみました。

無いんです、彼の名前が。

提示してくれた当病院の患者カードに書いてある名前は、

名簿に無かったんです。

「入院されているんではないんですね」

「入院じゃない。もう退院している。さっき家を出て散歩していたら、ここに居ました」

「家からですか…近くにお住まいなんですね」

「ええ、近くに住んでいます」

「ご住所は?」

「住所…えっとわからないです。忘れてしまったかな」

う~ん、精神科の患者さんか、痴ほう症の方なのか…と悩みながら、

聞いていた電話番号にダイヤルしてみました。

電話には、すぐに女性が出ました。早朝未明という時間なのに。

男性の氏名を伝えて、彼がここに居ることを伝えると、

「今日の昼に入院する予定なんです、夫は」

最初は慌てたような声でしたが、次第に落ち着いた声になってくれました。

電話に出ている方は、どうやら彼の奥様のようでした。

そして、娘さんがこれから車で迎えに来るということになり、

1時間後到着でお約束をいただきました。

彼の家は、なんと隣県なんです。

歩いて、家から病院まで行こう、

と思うような距離では無いんです。

どうやら、一度退院した後、

再入院する予定で、

再入院のことは知らないけど、

今日出かける予定だとは分かっていて、

早々と家を出てきたようだったんです。

彼がどこの出入り口から入ったかまでは、

知ることが出来ませんでしたが、

暗い病院内を歩いていた私にとっては、

突然現れたあのシルエットに驚かされたという出来事でした。

ま、こういう方って、

病院の周囲にはけっこう居住されているんです。

暗い時間帯に病院周囲を徘徊しているのを見かけても、不審者扱いしてはいけないんです。

当病院の精神科の患者である事が多いんです。

精神疾患の方を全て入院させる事は不可能ですから。

自分もいつかはこうなるのかなぁ、と心配になったりしますね。

ましてや、私はこの地域に身寄りの無い独身男性。

今回の彼は家族と同居されている方です。

私が、彼と同じような痴呆気味になって同様の行動を取っていたら、

どんな解決に落ち着くんでしょうね。

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3.おわり

暗い空間にいるとき、突然人影が現れたらビックリしますよね。

でも、当事者は故意に脅かそうとしている訳ではないんですよね。

彼みたいな行動を、

いずれは自分もとってしまう可能性があるかと思うと、

気が重くなります。

前回の記事

本題は『ヒトではないモノが巡回している…』

ホントはほんわかとした話になるはずだったんですが…。

人の死にまつわる不思議な話です。

『孤独死予備軍55歳独身オヤジの非正規夜間警備員、病院巡回日誌6』

まとめました!

『…病院巡回日誌シリーズ』記事1~8までの紹介と各記事への入口記事になります。

『夜間警備員のお仕事-夜の病院巡回は不思議で驚きの事件がたくさん!』

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