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最近、新型コロナウィルスのパンデミックで、世界中が大騒ぎしていますよね。
特に感染の酷い地域では窮屈な生活、
不安な生活を、
おくっていらっしゃる方が多いように思えます。
テレビのワイドショーなんか観ていると、
私の住む九州南部の地方都市とは雲泥の差があります。
こっちは、結構、他の国の出来事みたいな感覚で、
東京などの映像を見ています。
のんびりしていますよ、こっちは。
しかし、そうは言っても、私の勤務場所はそれなりの規模の総合病院。
それも高齢者の入院割合が非常に高い。
万一、従業員に感染者が発生したら、
一定期間は外来受付をストップせざるを得なくなると思います。
高齢者が多いということは、
死亡者も出る可能性が高いということですよね。
今回のウィルスに感染したら。
私たち警備員も病院スタッフの内になるんです。
最近は、病院の管理部長の指示で、
勤務前に体温を図るようになっています。
風邪のような症状になった場合は勤務停止になるようです。
でも、そうした場合、代替えの警備員っているのかな?
と思っているんです。
その場合は、恐らく誰かが連続出勤とか、
休日出勤となるんだろうな、と思います。
私はそれが一番嫌なんですよね~。
いまの病院警備は、4名体制でシフトを組んでいます。
2人がペアで出勤。
ま、ペアの組合せは日によって変わりますけど。
残り2人は休みとなります。
出勤組が、1人急遽勤務出来ないとなれば、
本来休みだった残りの2人の内、
どっちかが急な休日出勤となるんですよね…。
(夕方からの勤務…酒飲みに行っていたらどうするんだろう?)
憂鬱になります、そんな場面を思うだけで。
4人のうち、私が55歳。
残り3人は70歳越え。
・・・。
今回の本題は、前回記した予告とは違います。
予告内容を書こうと思ったんですが…。
つい最近、面白いというか、ビックリしたというか、
こんなことでいいのかな?
という事が起きたので、それを書きます。
新型コロナウィルス感染が問題になってからというもの、
私たち夕方から出勤の夜間警備員はめっきり暇になりました。
面会禁止になっていることが原因ですね。
ま、それ以前に面会時必須のマスクが手に入らなくて、
怒って帰る人が続いた事も、
一つの要因に上げられるかもしれません。
救急車で運ばれてくる人も、交通事故などの外科的処置を要する方のみ。
風邪、インフル、肺炎などの症状の人は運ばれてこないようです。
恐らく、そういう患者さんは、
国立病院や医師会病院へと搬送されているのだと推察します。
よって、私たちは夕方~早朝までを、ホント暇に過ごしているんです。
電話も滅多にかかってきません。
毎日受付に来られていた製薬会社の営業マンも、
全然見なくなりました。
夜間の病院内に居るのは、
医師、看護士を含めた病院スタッフと入院患者のみ、ということになります。
以前お話しましたが、
私たち夜間警備員のメイン業務は、
外からの不審者を侵入させないということと、
逆に入院患者の脱走をさせないこと、
の2点なのです。
そのために、病院内の巡回業務や、
各所に取りつけられた監視カメラと、警備室内のモニター画面による
監視をしているのです。
これまで、時々は発生していたようですが、
私自身がつい最近体験したことで、ちょっと驚くことがありました。
※防犯上の理由から、時間等は適当な時間を入力したり、ぼかしたりします。
病院内の夜間巡回時間って、そんなものなのか、と把握されても困るからです。
今年2月の、早朝未明という時間帯でした。
魚市場が開いた頃といった時間帯です。
もちろん真っ暗です。
私が仮眠から警備質に戻ると、
もう1人の、これから仮眠に入る警備員が言いました。
「東棟の方の患者さんらしき人が徘徊しているみたいだ」
私はモニターをのぞきこみましたが、姿は見えません。
「今は見えんけど、東棟の方からコンビニの方の出入り口までウロウロしてる」
私はふ~ん、と聞いていました。
良くあることなんで…。
入院したばかりの方って、
いつでも外に出られるのだと思っている方が多いんですよね。
そんなことないだろ、ホテルじゃないんだから…。
「了解です。気をつけて見ておきます」
私の言葉を聞いた先輩警備員は仮眠にいきました。
その時は、もう私の頭からは、
その不審な動きをする患者さまのことが消えてしまいました。
よくあることでしたので。
精神科病棟を含めると300人の入院患者がいます。
一般病棟にでも、痴ほう症の進んでいる老齢患者もかなりいます。
時間帯を問わず、看護士の数が手薄になっていると、
入院患者たちは外に出ようとして、
暗い病院内をさまよいます。
初めてみる方には、
ちょっと不気味さを感じさせる光景だったりしますね。
私は、病院の出入り口ドアの解錠をしに警備室を出ました。
それなりに大きな病院ですので、
出入り口は複数あります。
出入り口の中には、
病院に勤めている人しか知らないような裏口っぽいのも、
いくつかあります。
私は手に持っているマスターキーで、
ドアのカギを開けていきます。
マスターキーは、
いくつかのダミーキーとセットになっている鍵束の中にあります。
万一誰かに鍵束を奪われた場合でも、
すぐにはどの鍵が、使える鍵なのか分からないように、
全く使えない古鍵をダミーとして、
マスターキーと一緒に束ねているんです。
いくつか開けて廻っていて東棟の奥に向かっている時でした。
本通路の脇には、
枝道のように、各種検査室につながるやや細めの通路が時々合流しています。
ま、道路でいう交差点です。
私が本通路を歩いていて、ちょっと何か感じました。
今にして思うと、何かがいる、と感じたのだと思います。
ふと、立ち止まったとき、左側の視野に何か映ったんです。
そして、そちらを見ました。
!
!
!
背の高い人のシルエット!
じっと立ち止まってこっちを見ています。
「なにをされているんですか?まだ●●時ですよ」
そう言って、私は数歩近づきました。
「ここはどこですか?」
「出口はどこなんでしょう?」
???…。
瞬間、私は、彼が何を言っているのか分からず、
フリーズしてしまったと思います。
近づいていたおかげで、彼の姿がわかりました。
身長180センチの細身で、
70歳は越えていそうな知的で優しい顔をしている男性。
服装は、
薄茶のチノパンと灰色っぽいトレーナー、
スニーカー、濃い緑色のベレー帽、
小さめのリュック、といった格好です。
ベッドから出てきたとは到底思えませんでした。
「お名前は?」
と聞いて、氏名と自宅の電話番号を聞き出しました。
警備室に連れて行き、彼を座らせ、当日の入院者名簿を見てみました。
無いんです、彼の名前が。
提示してくれた当病院の患者カードに書いてある名前は、
名簿に無かったんです。
「入院されているんではないんですね」
「入院じゃない。もう退院している。さっき家を出て散歩していたら、ここに居ました」
「家からですか…近くにお住まいなんですね」
「ええ、近くに住んでいます」
「ご住所は?」
「住所…えっとわからないです。忘れてしまったかな」
う~ん、精神科の患者さんか、痴ほう症の方なのか…と悩みながら、
聞いていた電話番号にダイヤルしてみました。
電話には、すぐに女性が出ました。早朝未明という時間なのに。
男性の氏名を伝えて、彼がここに居ることを伝えると、
「今日の昼に入院する予定なんです、夫は」
最初は慌てたような声でしたが、次第に落ち着いた声になってくれました。
電話に出ている方は、どうやら彼の奥様のようでした。
そして、娘さんがこれから車で迎えに来るということになり、
1時間後到着でお約束をいただきました。
彼の家は、なんと隣県なんです。
歩いて、家から病院まで行こう、
と思うような距離では無いんです。
どうやら、一度退院した後、
再入院する予定で、
再入院のことは知らないけど、
今日出かける予定だとは分かっていて、
早々と家を出てきたようだったんです。
彼がどこの出入り口から入ったかまでは、
知ることが出来ませんでしたが、
暗い病院内を歩いていた私にとっては、
突然現れたあのシルエットに驚かされたという出来事でした。
ま、こういう方って、
病院の周囲にはけっこう居住されているんです。
暗い時間帯に病院周囲を徘徊しているのを見かけても、不審者扱いしてはいけないんです。
当病院の精神科の患者である事が多いんです。
精神疾患の方を全て入院させる事は不可能ですから。
自分もいつかはこうなるのかなぁ、と心配になったりしますね。
ましてや、私はこの地域に身寄りの無い独身男性。
今回の彼は家族と同居されている方です。
私が、彼と同じような痴呆気味になって同様の行動を取っていたら、
どんな解決に落ち着くんでしょうね。
暗い空間にいるとき、突然人影が現れたらビックリしますよね。
でも、当事者は故意に脅かそうとしている訳ではないんですよね。
彼みたいな行動を、
いずれは自分もとってしまう可能性があるかと思うと、
気が重くなります。
前回の記事
本題は『ヒトではないモノが巡回している…』
ホントはほんわかとした話になるはずだったんですが…。
人の死にまつわる不思議な話です。
『孤独死予備軍55歳独身オヤジの非正規夜間警備員、病院巡回日誌6』
まとめました!
『…病院巡回日誌シリーズ』記事1~8までの紹介と各記事への入口記事になります。
『夜間警備員のお仕事-夜の病院巡回は不思議で驚きの事件がたくさん!』
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