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1.はじめに
ここは九州の過疎化が進む地方都市。
市の中心部というか、賑わっているとこって、どこ?
無いんですよ。
この病院、市役所まで200メール程度なんですが、
この周辺、昼間も閑散としています。
夜中は、お正月か?と思うくらいに静か…。
近くには大きなお家も結構あったりします。由緒ある城下町跡なんですね。
でも、夜には真っ暗なんです。
そう、ヒトが住んで居ないようなんです。
夏は庭の草木が生い茂って、
秋には懐かしいセイダカアワダチ草が生い茂ります。
そういう廃墟らしき建物が、
幹線道路沿いにはいくつも林立しています。
せいぜい賑わっているとすれば、二つのイオン。
ひとつは元ダイエー。
どちらもショッピングモールなので、それなりに広い。
中学生、高校生、アジア系研修労働者たちが
集まってくるのはここだけ。
恐らくは、全国各地の似たような衰退していっている都市と、
同じなのではないかと思います。
イオンなどの大型ショッピングモールが、
撤退し始めたらどうなるんでしょうね。
いつかは現実化すると思いますが…。
地域に根差した中小の地元スーパーの方が元気良さげなんです。
小売業としては、イオンの方が負けている感じがします。
しかし、モールに入っているテナントに変化が無いから、
まだ大丈夫なんだろうとは思っています。
私は一ヶ月に15日程度、
自転車で、自宅アパートから10分ほどの所にある病院の、
夜間警備の仕事に従事しています。
入院患者数が常時300名以上いる総合病院。
精神科が大きくて、東西に伸びている本館とは別に、
専門病棟として、精神科が8階建てで本館の裏にひっそりと建っています。
精神病棟は、
二階から上が全部入院患者のフロアです。
入院病室とつながっているナースステーションの出入り口ドアは、
外にも内にも鍵穴があります。
入るにも出るにも鍵が必要な作りなんです。
ま、そうしなければいけないんですね。
そうする必要のある患者さんが多いんでしょう。
私たちの勤務は、
1時間のズレで早番、遅番とあり、
一日計2名がワンセットで一晩の業務にあたります。
夕方6時から翌朝6時もしくは7時半での上がりです。
私の他に3名がこの病院での夜間警備員の仕事をしています。
この3名の平均年齢は70歳。
55歳の私が一番の若手です。
直接の雇用主は、
全く別の場所にある警備会社。
会社に顔を出すのは半年に一回の研修の時だけです。
夜間の病院巡回って、なんとなく怖い感じがしますよね。
やはり、亡くなる方もそれなりにいらっしゃるからでしょうね。
もう今の時代、死は病院で迎えるのが当たり前ですよね。
自宅で、家族に見守られながら死んだら理想でしょうけど、
後が大変そうですね。
必ずお医者さんに診てもらわないと行けませんし、
お医者さんには普段から診てもらっておかないと、
病死なり自然死なりの死亡診断書を
スムーズには書いてもらえないみたいですね。
そういう事情もあっての、
亡くなるのは病院が望ましいんですね、遺族の立場では。
時々、夜中に病院かかりつけの患者さん宅から危篤や死亡連絡を受けて、
眠そうな顔をして、出ていくお医者さんを見ます。
話がそれました。
夜間の警備員は、誰でも出来そうに思えますよね。
その通りです。
怖くなければ、誰にでも出来ます。
歩いてまわることが出来て、
眼・耳・口が標準的に機能していればOKです。
ただ、この病院は24時間救急患者の対応をしているので、
時間を問わず救急車対応が待っています。
夜の10字以降は、小刻みで仮眠休憩と夜間巡回、モニター監視を交互に行います。
夜間出入口隣接の守衛室で、
モニター監視と電話番に就いている時は、
独りで全て対応します。
救急車対応も。
怖そうというイメージは、本当だと思いますね。
この1年半の勤務を経験したから、そう言えます。
実際に、怖い、と感じたこと無かったのですが、
怖がりのヒトだったら怖いかも、と思いますね。
そういう経験を何回かしましたので(笑)。
怖い経験というよりは、不思議な経験と言った方が適切かも…。
この記事では、
実際に経験した、
不思議なこと、面白いこと、なんかをつづっていきます。
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2.今日の本題『真夜中の車椅子』
病院の診察は、だいたい夕方に終わって会計処理やお薬渡しも18時くらいに終了となります。
病院の中に薬局というのも珍しいなぁと感じています。
今は、病院と薬局は切り離されているところの方が多いと感じていたんです。
ここが夜間の救急患者も受け入れる、
大きな総合病院だからなんでしょか。
18時半を過ぎると、
来院の患者さんや病院事務スタッフがゾロゾロ帰って行きます。
病院の治療スタッフたちの帰りはもっと早いですね。
17時から18時には夜間出入口から帰路についていますよ。
出勤は皆朝の7時から8時にかけてって感じです。
夜間警備員の私たちは、
18時から21時までは、
1人が受け付け&電話応対業務。もう1人が最初の巡回業務。
秋から冬は、
入院病棟、入院フロア以外の場所が暗くて、
既に暗闇状態です。
物音も皆無。
働き方改革のせいでしょうか、
残業する方は全く見なくなりましたね。
それがいのか、悪いのか、わかりません。
先月、病院事務スタッフの若手社員が男女1名づつ辞めていきました。
給料が安いからだと聞いています。
21時に受付カウンターから守衛室に移動します。
薄明かりの玄関ホールを抜けて行くときには、誰も居ません。
救急患者が運ばれて来た時以外は、いつもひっそりとしています。
この病院の入院患者さんの平均年齢は、
名簿をザッと見た感じで、70歳オーバーです。
そのせいか、夜の9時にはおとなしく
就寝目前の状態になっています。
11月下旬の寒い日だったかな、
夜9時ころに救急車が立て続けに3台来て、
その時間バタバタした忙しさが1時間ほど。
寒くなると亡くなる方が増えたり、
体調悪くした方がいつもより多く運ばれてくるんですよ。
救急車対応が終わったころに、
私は交代で短時間の仮眠を取りに2階の診察室待合ロビーへ。
吹き抜けの一階ロビーから漏れてくる薄明かりで、
なんとか見える程度の明るさに過ぎません。
並んだ椅子、ソファなどが行儀よく並んでいるのが分かります。
分かるといっても、シルエットですが。
その中の長椅子にごろんと横になります。
仮眠はいつもここです。
仮眠を取りながら、
不審者の有無を調べているような感じですね。
いるんですよ、実際に不審者って。
ただ、犯罪性はないんです。
寒くなったから、とか、暑くなったから、
という理由で、
入り込んでくる男性が時々出てくるんです。
丁重にお断りして、お帰り頂きますけどね。
夜の11時には、
眠れたかどうかわからない状態で起き上がって、
巡回にいきました。
救急患者対応もすっかり終わったらしく、
救急処置室も明かりが消えて、
ナースさんたちも仮眠をとっているようでした。
院内はシーンと静まり返っています。
ま、だいたいこの時間帯にはそうなることの方が多いんで、
何も違和感はありませんでしたが。
ただ、気になっていたのは、
仮眠をとっていた場所の近くにある、
西館エレベータが何度か作動していたことです。
一度や二度だったら、まあ分かりますが。
夜の10時以降にエレベータが動くのは、
救急患者の処置ぐらいなんで。
この夜は救急車の来院が3回ありましたから、
異常とは言えませんよね。
でも、救急患者の処置は早々と終わっていたんですが…。
そういえば、
5回の集中治療室でお亡くなりになった方が出たと、
巡回前に耳したので、
その関係でエレベータ使ったのかもしれません。
ま、深くは考えるたちではありませんし、
この場所で、この時間帯、この空間で、
変なことを深く考えるのはよくないと、
常々思っていましたから、
考えるのはストップしました。
精神科入院病棟から、本館の東館、西館という順番でまわりました。
昼間とか、かなり多くの人が行き交うこの病院内も、
真夜中になるとひっそりしているのが不思議なくらいです。
床もきれいで、椅子も整然と並んでいます。
建物の外から、
滅多に通らない車の走行音が聞こえてくるほど静かでした。
本館の西館は、
まずエレベータで8階まで上がってから、
歩いて巡回しながら降りてきます。
1階ロビーから、エレベータに乗ろうとした時に、
ふと玄関自動ドアの方を見ると、
「えっ?」
と少し驚きました。
1台の車椅子が、ポツリとあったのです。
ガラスの大きな自動ドアに向かう形で、
自動ドアから3メートルくらい手前の距離で置いてありました。
ガラスの向こう側は外で、病院の玄関エントランスです。
なんでこんな所に、車椅子?
そんな想いを抱きましたが、
少し離れたところに車椅子を集めて置いてある場所があるので、
ナースさんが使った後、忙しくてここに置いていったのだろうと…。
とりあえず、車椅子を畳んで、いつもの場所に移動させました。
あまり何も考えない方がいいんです。
仕事が先に進みません。
仕事が出来なくなります。
冷や汗も出てきます。
すぐに先ほどの車椅子の件は忘れました。
もう習慣づけ出来ていますんで。
8階からの巡回は、別に何事もなく進みました。
各階のナースステーションには常時2人の看護士さんがいて、
パソコンに向き合っている方や、何かの計器をじっと見つめている方とか。
順調にまわっていたとき、
初めての光景を目にし、背中がゾクッとしました。
5階から4階への階段を下りていた時です。
かなり暗い、薄明かりの中でした。
それでも、2階診察室が並んでいる、
いつも仮眠を取るところよりはかなり明るいです。
こういう大きな建物の階段って、
一直線ではなく、ジグザグになっていて、
必ず踊り場がありますよね。
その踊り場に、
下に向かう形で、
車椅子があったのです。
階段の、踊り場に、車椅子?
こういうとき、撤去するのも私たちの仕事です。
放っておいたら、次に見つけた人から管理部とかに報告されかねません。
時間とかで、自分が放置したということが、わかってしまいます。
何も考えずに4階のしかるべき場所まで移しました。
今回はここまでのお話です。
車椅子が、真夜中に、階段踊り場にあった、というだけのお話でした。
これは事実です。
報告書には書きませんが…。
何も考えないのが一番です。
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3.おわり
不思議ですよね。
イタズラにしては、ちょっと面白さが無いというか、
その場のビックリ度が低そうに思えて、
悪戯としては、やらないと想像します。
車椅子は、ヒトが見て驚かない場所に置いておきました。
何も考えないのが一番です。
仕事はまだ続きますので。
つぎは、精神科病棟巡回時での出来事です。
『引きこもり予備軍55歳独身オヤジの非正規夜間警備員、病院巡回日誌2』
※今回の記事内容では、
記事タイトルにあるような、
私の、引きこもり予備軍の孤独な生活感を、
どこにも記述していませんでした。
ま、あまり意識して書く必要もないだろうな、
と思っていた次第です。
いずれ、どこかでそれに触れることもあろうかとは思います。
まとめました!
『…病院巡回日誌シリーズ』記事1~8までの紹介と各記事への入口記事になります。
『夜間警備員のお仕事-夜の病院巡回は不思議で驚きの事件がたくさん!』
こちらの記事もあわせてお読みください。
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